非営利型株式会社で挑戦する「新しい会社のモデルづくり」
通勤コースを変えてみた。
自宅から靖国神社に出て、靖国通りを神保町辺りまで下って右折。なだらかな下り坂と平坦な道だけなので、昨日のように息がハァハァしたり、汗がダクダクと流れることは無かった。太腿と膝はガクガク・ブルブルしてたけど、景色を横目に眺める程度のことはできた。が、車も人も多過ぎるし、通勤を楽しむほどの余裕は正直まだ無い。信号待ちが多いのも気になる。そう、つま先立ちをしないといけないからね。(笑)
さて、問題は帰り道。どんなコースを選択しようが、幾多の上り坂が愛しい我が家への帰宅を妨げる。あの困難が待ち受けていると考えるだけで、家路に向かう足が重くなる。いや・・、いつも帰りが遅いことを言い訳したいんじゃないですよ。念のため。
さて、ここらで閑話休題。現代版「家守」としての挑戦についても書き始めてみよう。
現代版「家守」を標榜するプラットフォームサービス株式会社(PS)は、去る8月29日の株主総会にて定款変更を行い、名実ともに「非営利型株式会社」になった。非営利型の株式会社!? 言葉だけ聞くと、論理矛盾じゃないかと感じる人がいるかも知れない。一方で、外形はともかく実態として非営利型の経営を行っている会社も少なくない。
非営利型の株式会社に関する法制があるわけじゃない。しかし、ともあれ僕たちは株式会社でありながら定款に会社の理念を規定し、事実上、普通株主の配当権・残余財産の分配請求権を一部制限する規定を組み入れた。これはちょっとした「挑戦」であるかも知れない。何に対して挑戦しているのか、よく分からないけど。(笑)
新会社法第105条には、株主の権利として配当権、残余財産の分配権、議決権の3つが明記されている。その上で、配当権と残余財産の分配権の双方を認めない定款は効力がないとされている。僕らの定款は社会的投資家の「志ある投資」に支えられて総会で認められはした。残余財産の分配請求権を否定しているわけじゃないから法的に無効とは言えないだろうけど、その立場は微妙だ。
1990 年の商法改正を前に、当時大学生だった僕らが作った会社の定款は、商号や目的、所在地や資本の額などを除けば、そこらに転がっているひな形をそのまま流用したものだった。同時期に大勢の学生起業家が誕生したけど、仲間たちが作った会社の定款はどれも似たり寄ったりだったし、仲間同士で貸し借りをして、発起人や役員を兼務したりしていた。これからの会社の定款はもっとクリエイティヴになって良い。実態に即して、より自由な結社が認められる必要がある。「株式」も「会社」も所詮はツールに過ぎない。
そんなことを具体的に考えられるようになったのは、「経済セミナー(日本評論社)」2004 年3月号に掲載された「非営利型株式会社の提案(跡田直澄・渡辺清)」を読んでから。PSを設立するにあたって、日頃からお世話になっている山田長満さん(日本起業家協会・理事長、株式会社KSP・代表取締役)に相談に伺った折、「君たちのやろうとしていることの参考になれば」と論文の写しを頂いた。氏からは、僕が最初に会社を設立した時にも多くの助言を受けた。その言葉の一つ一つに大きく影響されてきた。いつか、それらについてもここで紹介したい。
「非営利型株式会社」の定款を作るにあたって、上述の論文の共同執筆者である渡辺清さん(寄付市場創造協会・理事長)から多くの指導・アドバイスを頂戴した。総会対策用のQ&A集まで作成してもらったのだけど、実際にはそれは使わなかった。これまでの株主募集の経緯もあって、総会の場では株主から特段の質問や異議は為されなかった。総会を「小笠原伯爵邸」で開催したことが功を奏したのかも知れない。僕を含め、たぶん大半の皆さんは早く乾杯をして、のんびりと美味しい料理を食べたかったに違いないから。(笑)
渡辺清さんによれば、「ジュリスト(有斐閣)」2005年8月1・15日合併号に掲載された神作裕之さん(東京大学教授)の論文に以下のような指摘があるという。
「定款において、対外的企業活動から得た利益(剰余金)を所定の非営利団体に寄付するといった定めを置くことも、残余財産分配請求権が否定されない限り適法であるという解釈論も、会社法の下ではまったく成り立たないわけではないように思われる。実質的にも、営利部門と非営利部門の境界の曖昧化、流動化、競争関係の発生、両者の関係の多様化等にかんがみるならば、会社法の発展の一つの方向であるとも考えられる」
直截的な表現ではないけれど、非営利型の株式会社が会社の新たなモデルとなる可能性を示唆している。とすると、僕らは「新しい会社のモデルづくり」に挑戦していると言ってもいいのかな。いいんだよね? というわけで、現代版「家守」の挑戦日記、はじまる。
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